山とRallyの共通性

自動車免許を取得して、数年が経った頃から、車の運転に興味が湧いてきた。

それまでは、バイクでレ−スをしていたりして、車は移動の手段と考えていた。

そんなある日、一台の車に出会った。
トヨタ:AE86レビンだ。
1600cc
の小型車でFR、まさに後輪駆動の時代が終わろうとしていた、

最後の小型スポ−ツだ。

学生の身には到底買えない価格であったが、中古車ながら

えいや!って購入した。
もちろんロ−ンなど組めず、父親を説得しての親ロ−ンだ。

納車の晩には箱根へ繰り出し、何度壁にぶつかりそうになったやら?
でも、二輪で走る感覚とのあまりの違いに新鮮な思いだった。

数ヶ月も経たずに、あるショップの門をたたき、サ−キットを走れる車にして欲しいと頼んでいた。

何度かサーキットを走ったが、どうも感覚が合わない、二輪時代は気にならなかったのだが、同じところを周っていると車に酔ってしまう。

そんなある日、ショップの先輩が、峠に練習に行くけど来ないか?と誘ってくれた。
その人は、Rally屋さんだったので、自分の車では、ダ−トは走れないと断ったところ、今日は舗装路だからおいでヨ と言われ興味本位で付いて行く事となった。

誰も来ない林道でしばらく走り、どんどん次の山へ移動していくうちに、

ダ−トの林道となった。


ま〜、移動中にはこんなところも出て来るだろうと走り出すと・・・・
すんげ〜楽しい!


まるでスキ−をしているかの様に車は滑って行く!
ゲレンデをタ−ンして行くように、車はコ−ナ−を滑って行く。

あ〜!!!
そうか、すっかり騙されたんだ、、、、これは彼の計画的犯行だったんだ・・・

翌日、ショップでRally用の改造を早速頼んでいる自分がいた。


「こちら側へようこそ!」
彼の企みに、まんまと踊らされた自分への、温かい言葉だった。

 

それからの日々は、まさにRally漬けの日々だった。

 

 

どんどんエスカレ−トしていく業界。
車は4WDの時代を迎え、JAFの規制緩和が手伝って、どんどん改造範囲は広がっていった

車両価格は際限なく上って行く。
到底サラリ−マンの給料では底を突く。

今となっては、自分でも考えられないが、、、、
最後に作った車、スバルGC8型インプレッサの価格にいたっては

車両300万円、登録費30万円、改造費300万円である。
さらにメンテナンス代や修理代として+300万円がかかった。
これを3年乗らないのだ。

Rallyが競技である以上、常に最新の戦闘力を持ったマシンが必要となる。
そうなると、長く乗っても3年なのだ・・・

そしてその間にも、メンテナンス費用が発生する。
もっとも、3年もたずに壊れる事が大半であるが・・・

最終的に数えると7台のRally車を作った。
総額は考えただけで恐ろしい。


とはいえ、命を預け、スポ−ツとしての競技である以上、道具に妥協は許されないのは山登りも同じだと思う。
大きな違いは、山登りは競技では無い点か。。。

 

 

Rallyが他のモ−タ−スポ−ツと大きく違う点は、ナビゲ−タ−を必要とするところだ。
つまり、地図を読む相棒が隣にいるのだ。
サ−キットと大きく違うのは、公道を使うRallyは事前にコ−スは公表されず、

スタ−ト前に特殊なコマ地図と呼ばれる地図を渡される。
これをナビゲ−タ−が読み、その指示で走るのだ。

 

Rallyコ−スは主に一般道を繋いで、山岳林道でスピ−ドを競う競技だ。

なので、ナビの指示は、一般道では

200m先信号右、800m先、酒屋の看板を左

といった指示となる。

 

 

山岳ステ−ジでは一転して、指示が変わる

ペ−スノ−トと言うメモを読みあげる

 

スタ−トでは、オフィシャルにより指定ラインに車を誘導され停車

指定時刻まで待つ

前車との間隔は60秒だ

 

自車の指定時刻になればこんな感じでスタ−トだ

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

サン・・・

 

ニ−・・・

 

イチ・・・

GO!

 

ストレ−ト200

R3

 

L2

 

R6ロング!

 

ストレ−ト100 GO!

 

R3コ−ション!

右側に石

 

 

L2 !!コ−ション
外側は谷

 

ストレ−ト50からクレスト R2

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

こんな感じでNaviの指示が飛ぶ

ナビの指示を信じて、知らない道をアクセル全開で駆け抜ける

 

ちなみにクル−によって違うが、我々はこんな感じだった

R=右コ−ナ−

L=左コ−ナ−

16段階でコ−ナ−の曲率を決めていた

1=かなりキツイコ−ナ−:1速で行くぐらい

6=ほぼ直線だが、微妙に曲がっている

 

数字は距離で、ストレ−ト200は、直線が200m

 

コ−ション!=なんらかの危険要素がある

 

クレスト=登りのピ−クでそこから下る

場合によっては飛ぶ所

飛び過ぎると次のコ−ナ−を曲がれなかったりする()

 

真っ暗な闇の中、狂った奴らが駆け廻るのだ。

 

僕がRallyを好きだったのは、他人と直接競わないところだった。

サ−キットのレ−スなどは、相手が目の前にいて抜いたり抜かされたりだが

Rallyは、一台ずつのタイムアタックを何度も繰り返し、その合計時間を競う

 

一晩中かけて、何度もスタ−トとゴ−ルがある

 

スタ−ト前には、他のクル−と雑談する時間もあり、タイムをお互いに聞く事もできる。

 

本当のタイムを言うかはわからないけど()

三味線弾いて油断させたりと、そんな駆け引きも楽しい

 

見えない相手と競う競技は珍しいと思う。

 

ライバルがどれほどのスピ−ドで走っているかわからないのだから・・・

 

概ね、ひと晩で250km程の距離を走り、

30km程のタイムアタック区間を走る(スペシャルステ−ジと言う)

 

スペシャルステ−ジでかかった時間はそのまま減点となる

1秒につき1点だ

 

ライバルの情報を集めつつ、この時間差を調整するのがRallyの楽しさだと思う

差が大きければ、ペ−スを緩め、マシンの負担とリスクを減らす事も選択肢の一つだ

 

逆に差をつけられているなら、次のステ−ジでは、ギリギリまでプッシュする事となる。

もちろんリスクは最大になる。

 

クラッシュの確率は大幅に上がる

 

この心理戦が楽しくて、まさに麻薬だった

 

些細なミスで失った時間は取り返せない

でも、相手との相対時間は取り返せる

 

あと一秒!

とにかく一秒が欲しくてアクセルを開け続けることになる

 

 

 

ひと晩のうちに何度も繰り返されるドラマに、僕らはRallyは

「一晩の人生」ってよく言っていた。

 

想像できるかな?

一晩中走り回って、上位三台が1秒しか差が無いこともあるって・・・

 

小さなミスや大ポカ、最高のパフォ−マンスや、そつない展開を繰り返し、

終わってみれば一秒差

それぞれのクル−の中で作り出される、ひと晩のドラマ

 

そんなRallyが大好きだった

 

山に話を戻そう

 

山に登るようになって感じたのは

自分の能力を最大限に発揮させて遊ぶって事だ

この点がRallyに似ている

 

生命を掛けてはならないと思うが、掛っているのは否定できない

・・・同じだ

 

そして、ただ歩くという行為のために、大金を払う()

より快適に、安全にと道具を揃えればいくら必要か・・・・

 

溢れる情報から必要な事を選択し、吸収していく。

神経を研ぎ澄まし、五感を駆使して、持てる技術を使い

ただ歩く・・・

 

なんてシンプル

 

そして誰とも競わない

 

技術的には、足の運びや荷物の持ち方、アイゼンやピッケルの使い方や、岩山でのル−トファインディング。

学ぶ事はいくらでもある

 

でも、全て車の運転と同じだ

慣性と重力、バランスと力学、質量と速度、危険予知と回避能力

そして総合判断力

 

なんだ、Rallyと登山は同じじゃないか!

 

道具にお金がかかるとこまで・・・^^;

 

いつのまにやら、山に登ることになったのは必然だったのかもしれない・・・?